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一般寺院におけるホームページの運用について −浄土系寺院の現状分析− 浄土宗総合研究所 専任研究員 今岡達雄 「インターネット白書2002」によれば、2002年2月時点での日本のインターネット人口は4,619万6千人で、昨年2月の3,263万6千人から、1年間で1,356万人(41.55%)の増加となった。また、インターネットの世帯浸透率(利用場所、接続機器を問わず、1世帯に1人以上インターネット利用者がいる割合)でみると、昨年の46.5%から62.4%へと急増し全世帯の過半数にインターネット利用者がいることになった。インターネットはもはや特別な情報メディアではなく、一般的な情報メディアになったものと考えられる。 宗教法人におけるインターネット利用(WWWあるいはホームページ)も急増しており、今後もホームページを開設する寺院が増加するものと考えられる。そこで、一般寺院で開設・運用されているホームページの現状についてその特性の分析を行ってみた。一般寺院として採りあげたのは浄土宗寺院および真宗十派寺院のホームページである。他宗派については今後分析を行う予定である。 (1)ホームページ開設寺院数 ホームページ(以下HPと略す)を開設している寺院数を正確に把握することは極めて困難な作業である。HP開設寺院を見つけ出すには複数の方法がある。第一の方法はHP登録サイトを見ることである。登録サイトとして最も権威があるのが
ヤフー(Yahoo)である。ヤフーはインデックス型の登録サイトで
、2002年9月5日現在の浄土系寺院のHP数は、「生活と文化」→「宗教(1990)」→「宗教別(1922)」→「仏教(738)」→「浄土(130)」の下位に展開されており、時宗 (1)、浄土宗 (25)、浄土真宗 (83)、真宗大谷派 (12)
、真宗興正派 (2)、真宗高田派 (3)、西山浄土宗 (3)となっている。かっこ内の数字は登録されているHP数である。 第二の方法はリンク集を探す方法である。例えば浄土宗に関しては浄土宗HPに浄土宗一般寺院HPに349寺院HPへのリンクが用意されている。しかし、宗派のHPに対する取り組みの違いにより他浄土系宗派ではこのようなリンクは用意されていない。ただし、個別寺院で充実したリンク集を作っているHPがある。例えば浄土真宗本願寺派蓮浄寺の寺子屋ネットでは真宗系寺院HP330サイトへのリンク集がある。 ここでは、浄土宗については浄土宗HPのリンク寺院、真宗十派については蓮浄寺・寺子屋ネットのリンク寺院をベースに、Yahooや寺院コムに登録されている寺院を加え、更に本山や各種団体のHPを除外し、一般寺院HPの分析を行うことにした。分析対象となる寺院数は以下の通りである。 表 1 浄土系寺院のHP作成比率
*数値は平成12年末(宗教年鑑平成13年度版)寺院数は宗教法人で寺院と教会の合計 **HP数は平成14年7〜8月 表を見ると浄土宗のHP作成比率が際だって高く示されている。これは、HPの内容を吟味することによって明らかになるが、浄土宗では宗務庁で一般寺院の希望によって各寺院のHPを作成していること、和歌山教区では教区浄青が教区寺院のHPを作成していること、東京教区芝組では組浄青が組内寺院のHPを作成していること
等により、HP保有寺院数が多くなっている。これらのHPは寺院概要を示す一頁のみで構成されており、内容工夫して作成された他のHPと同列には取り扱えないと考える。また、(株)寿企画が「ぶっだわーるど
」で作成しているHPも寺院概要を示す一頁のみで構成されており、布教という観点から見ると変則的なものと考えられる。これらを除くと浄土系寺院のHPは1
18件で全寺院数に対するHP作成比率は約1.7%となる。これは、浄土宗と真宗十派を加えた浄土系寺院の平均値に近くなる。 (2)ホームページの稼働状況 いったん作成されたHPも何時までもそのまま存在するわけではない。内容を変更しなくても、HPを保存してあるWWWサーバーやプロバイダーの都合によってURLというHPの場所を変更しなければならないことが多く、何もしないでいるといつの間にかアクセスできなくなってしまうことが多い。HPの場所(URL)が示されていてもアクセスできない状態を「リンク切れ」と呼んでいる。 例えば、浄土宗寺院の全HP数321のうちリンク切れのHPは29(約9.0%)あった。真宗十派の全HP数324のうちリンク切れのHPは69(21.3%)である。まとめて作成されたHPでは管理者がいるためリンク切れする可能性が低く、個別寺院管理のHPの方がリンク切れの可能性が高い。浄土宗寺院HPのうちまとめて作成されたHPを除いてみると、HP数1 18に対してリンク切れ29(24.5%)となり、真宗十派HP数305に対しリンク切れ69(22.6%)よりも比率が若干高くなっている。 表2 稼働中のホームページ数
各寺院のHPに記載されている内容からキーワードを抽出し、HPに記載されている内容を計数してみた。 表3 一般寺院HPの記載内容
*浄土宗寺院で宗、教区、組で作成したHPは寺院概要のみで構成されており、かつその数が多いため自主作成のものを別掲した。 抽出されたキーワードは9項目、その他の内容が記載されている場合には「その他」として計量した。また、寺院の住職、副住職やその他寺院関係者が寺院としてではなく個人として作成したHPは個人HPとした。
1)寺院概要 2)年中行事・行事案内
3)広報
4)教義と法話
5)活動記録とエッセイ
6)事業広告
7)レスポンス
8)その他
HPでは多くの場合アクセスカウンターを表示することが出来る。HPへのアクセスは、あるWEBページに何回アクセスがあったかを数える「アクセスカウンター」、あるいは「ビジット」とか「セッション」といった訪問回数、一回の訪問で訪れたページ数を全て数える「ページビュー」、同一人が何度訪れても1人と数える「ユニークオーディエンス」数などがある。インターネット上のHPがどの程度見られているのであろうか。日本国内で最もアクセス数が多いとされているYahooでは平成14年5月15日に一日に最大値で3億ページビューが記録されている。また「ユニークオーディエンス」としてはYahooに一ヶ月間で1930万人が訪れている。 表4 HPへのアクセスカウンター数
HP上にアクセスカウンター表示があったHP件数は浄土宗105件のうち37件(35.2%)、真宗十派305件のうち169件(55.4%)でアクセス数に対する興味が真宗十派の方が高いことが示されている。表示されているアクセスカウンター数の範囲を対数でリニヤーになるように定め、該当するHP数を計数したのが 表4である。アクセスカウンター数が1,000以上10,000未満の範囲が最も多くて123件(59.7%)、次いで10,000以上100,000未満が61件(29.6%)であった。 アクセスカウンター数が最も多かったのは浄土真宗本願寺派の僧侶が匿名で開設している「最低山極悪寺」で、 2002年9月5日現在で304,866であった。内容は言いたい放題(エッセイ)、仏教・浄土真宗入門、掲示板、写真アーカイブである。 表5 浄土宗寺院のアクセスTOP10
表6 真宗十派のアクセスTOP10
*2002年9月5日現在
HPに記載されている内容とアクセス数には何らかの関係があるはずである。アクセスカウンター数とHP内容の種類数は両者とも計数的に扱える数値であるので、両者の相関分析を行ってみた。その結果、アクセスカウンター数とHP内容の種類数には相関関係は見られないことが分かった。多分、HPへのアクセス数はHP内容が多彩であることが重要ではなく、訪問者を引きつける内容そのものに依存するものと思われる。 例えば、今回分析対象の中で最もアクセスカウンター数の多かった「最低山極悪寺」は「作者の毒舌的エッセイ」、「続き物読み物風仏教・真宗入門」「聖典の現代語訳」「写真集」から構成されているが、言いたい放題に種々のトピックにコメントしているところが良い点なのかも知れない。第2位の浄土真宗本願寺は光輪寺の「坊さんの小箱」では、「国立墓苑について」、「宗会漏洩問題」、「脳死・臓器移植」、「還浄資料」、「同朋運動」、「HPの現状と課題」など社会的問題や宗内の最新の話題にコメントしているところが良い点なのかも知れない。第3位は浄土真宗本願寺派崇敬寺の寺庭婦人(坊守)が制作している「自分さがしの仏教入門」で、時々に生活の指針となるような言葉に行き着くように構成されている。寺院のことではなく、人の迷いや生き方に関するHPになっているところが良い点なのだろう。 4位法真寺、5位聖徳寺、6位三宝寺、 8位明覚寺はコンピュータやネットマニアによって作成されたと思われるHPで、携帯機器用のHP作成言語、PCの作り方やフリーソフト、ネット回線速度の計測ソフトウェアなどのダウンロード案内がある。 7位成正寺は浄土真宗仏事相談サイトで「浄土真宗でのタブー」、 「浄土真宗のお仏壇」、 「浄土真宗の葬儀」、「浄土真宗門徒のお墓」、 「大谷本廟への分骨・納骨」、「法事・法要について」、「浄土真宗での水子供養」が記載されている。典型的なハウ・ツーものだが人気が高い。 9位妙念寺は真宗の教義、経典の現代語訳や法話などがあり、携帯電話のiモード対応が特徴である。10位宗玄寺は多彩な内容でアクセスされている。 10位宗玄寺ではHP内の頁別アクセス状況を表示している。このアクセス集計によれば、仏事の習慣に対するページのアクセス比率が高くなっている。第2位にある「忠臣蔵・・」はこの寺が赤穂浪士ゆかりの寺だからで観光案内のようなものであろう。 表7 宗玄寺のページ別アクセス数上位10ページ
出典)http://www.gem.hi-ho.ne.jp/cgi-bin/user/sogenji/limemgr.cgi
浄土宗一般寺院でアクセス可能なHP292件のうちメールアドレスあるいはフォーム入力式のメールが記載されているものは63件(21.6%)であった。メールアドレスの表示はインターネットを介してレスポンスを受け付けるという意思の表示である。逆にメールアドレスの表示がないHPはレスポンスを拒否していることになる。確かにメールアドレスを表示すると不要なメールが届くことがある。だからといって表示しないということはインターネット上で情報発信を行う資格に欠けるものと思われる。 真宗十派ではアクセス可能なHP255件のうちメールアドレスあるいはフォーム入力式のメールが記載されているものは189件(74.1%)であった。浄土宗HPのうち自主作成HPに限定すると89件中メール表示のあるものが60件(67.4%)となり、真宗十派の値に近づく。つまり、インターネットに直接アクセスする手段を持たない寺院がHPを作成した場合、当然のことながらレスポンス先のメールアドレスを持たないのでメールアドレスが表示されない。本来ならばHPへのレスポンス手段として何らかの方法が必要である。
インターネット上に存在するコンピュータやネットワークにつけられる識別子(名前)。インターネット上の住所のようなもので、数字の羅列であるIPアドレスは人間にとって扱いにくいため、アルファベットと数字(と一部の記号)を使うことができるドメイン名を別名として運用するようになった。 オリジナル・ドメインとはHP作成寺院が固有のインターネット上の名前を持っていることを示す。例えば浄土宗善照寺ではzenshoji.or.jp、zenshoji.jpという2つのドメインを所有している。オリジナル・ドメインを取得し利用している寺院は浄土宗で8件、真宗十派で26件であった。これは平成14年8月現在で稼働している浄土宗寺院作成HP(自主制作)の9.0%、真宗十派寺院作成HPの10.2%でほぼ同レベルである。
浄土宗一般寺院のHPとこれと対比するために真宗十派の一般寺院のHPを対象にして分析を行ってきた。浄土宗寺院のHPは真宗十派寺院に比較してHP作成寺院数が多い、しかしこれは宗、教区、組等の組織がHP作成を推進した結果で表面上は普及率が高くなっている。しかし、HPに記載されている内容の点からみると単に寺院概要が示されているだけである。組織的推進のHPを除くとHP作成寺院の比率はほぼ同率である。 HPの内容は浄土宗寺院では寺院概要や年間行事のような寺の特性項目を重視するのに対して、真宗十派寺院では教義・経典・法話が重視される傾向にある。また、浄土宗寺院では事業広告(墓地、斎場、ペット供養)の比率が高い。 寺院HPへのアクセス数は人気サイトが一日3億回も見られているのに対し、最大で見積もっても一日500アクセス程度、平均的には一日15回程度である。アクセス数は内容の豊富さバラエティよりも、特徴的な内容を提供することによって数を増やすことができる。HPへの訪問者が期待しているのは仏事に対する習慣や常識的な対応方法であり、このような情報の記載はHPはアクセス数を向上させる効果があった。また、パソコンやインターネット、携帯電話のマニアックな使い方を提供することもアクセス数を向上させる効果があった。しかし、今後ともこのような情報が必要とされるか否かは分からない。 HPの構成内容を分析して気がついたことは、これまでのHPは寺院概要、年間行事、寺報、教義、法話にせよ素材をインターネット上に乗せることに努力の中心があったように思われる。これまで成功したHPは情報提供の対象者が明確なものである。仏事の習慣を知らない多くの人々、パソコンやネットワークの知識を持たない多くの人々等である。これから誰にどのような情報を提供できるかが今後の課題であろう。
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The First Virtual Temple in Japan since 1995.12 |
2002.9.10更新 |